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HISTORY OF CHOPSTICKS
塗箸の歴史

塗箸の誕生は若狭地方

福井県小浜市(若狭地方)。塗箸の誕生は若狭地方が最初でした。時代をさかのぼること400数十年前。海の町、若狭小浜の浜辺で、波に洗われる砂や貝殻を漆とともに箸につけたことが由来とされており、当時は「磯部塗」と称されていた漆芸であったようです。その後、江戸時代1764~71年(明和年間)に、小浜藩主・酒井忠勝侯により「若狭塗」と命名されました。その時代、塗箸というのは、非常に高級なものとして珍重されていました。そのため当時は大名武家の間での使用のみが確立されていました。ではなぜ、若狭塗が豪華で優美な高級品として扱われていたのでしょうか。それには塗箸を作る技法と期間素材に理由があったのです。

時代と共に変化する塗箸

前にも述べたように、塗箸が全国に普及したのは1894年、日清戦争後のことです。第二次世界大戦前までは、本漆(ほんうるし)の高価な箸が珍重されていました。しかし、少量しか作る事のできない本漆の箸はその時代においても、非常に高価なものでした。そのため戦後から、化学塗料を使用した塗箸が発達しました。速乾性があり、色も様々な化学塗料の箸により、作業性の向上から塗箸の大量生産が可能になりました。この頃から、大量生産と共に「若狭塗箸」が塗箸のシェアを拡大することとなりました。日本において、塗箸が当たり前の存在になったきっかけは、高度成長期からといってもおかしくありません。化学塗料の出現により大量生産された塗箸から「箸=安いもの」という概念が生まれました。高度成長期後の技術革新により、若狭塗において印刷された柄物の箸や、カラフルな箸が出現しました。低価格で庶民的なものとして位置づけられた塗箸は、人々にとっては日常茶飯事使用する道具となっていきました。塗箸とは、時代を反映するものであると考えられます。なぜなら、時代ごとの技術的な面や、日本の景気によっても主流となる塗箸は日々変化を遂げているからです。その典型的なものとして挙げられるのがバブル時代です。豪華なものやきらびやかなものがステイタスとなったバブル時代(昭和50年後半~60年代)その波は塗箸にも影響を与えました。バブルの影響・・・それにより、より一層カラフルな箸、きらびやかな箸がこの時代のトレンドとなりました。「金」・「カラー」がこの時代の塗箸の特徴であった事が、若狭塗箸からもうかがうことができます。

塗箸の今

日本人の価値観の変化・・・それはバブルの崩壊と共に訪れたものであると考えられます。「量から質へ」、「豪華よりシンプル」という概念、つまり大衆に誇示しようという価値観から、より個人好みに価値観を見出そうとする動きがバブル崩壊後から見られ、今も尚続いていると考えられます。塗箸においてもその考え方が顕著なものとして現れてきているのが今の時代です。なぜなら今、着飾った塗箸よりも木地(自然木)に近い、シンプルで素材感のある素朴な塗箸が脚光を浴びているからです。竹箸・木箸いずれにしても、きらびやかな箸とは似ても似つかない箸。つまり、素材感を意識した味わいのある素朴な箸が塗箸の今を象徴しているのです。

箸文化の今

漆は100%天然素材です。近年、その抗菌・抗ウイルス作用が注目され、耐熱性にも優れております。そして何より、何回も使用できるため、森林資源保護などの環境問題にも対応しています。

嫌い箸 其の弐

箸は万能食器といわれるように、つまむ・はさむ・切る・運ぶなど、多彩な機能があります。よく見かける芋などの「刺し箸」は、子供には仕方ないが、大人には慎むべき事ではないでしょうか。

こじ箸
食器に盛った料理を上から食べないで、箸でかき回し、自分の好物を探り出す。
迷い箸
どの料理を食べようかと迷い、料理の上をあちこちと箸を動かす。
握り箸
初歩的な持ち方であり、箸の機能はまったく果たせない。食事の途中で握り箸にすると、これは攻撃を意味することになる。
持ち箸
箸を持ったまま、他の食器を持つ。
探り箸
食器の汁物などをかき混ぜて中身を探る。
受け箸
箸を持ったまま、お替りをする。

嫌い箸 其の壱

マナーの厳しい西洋料理には、定まった食事のコースがあり、普通オードブル・スープ、などのように料理の順番が決まっていますから、その順に食べていけばよいのですが、日本料理においては、コースの料理が食卓や膳に一通り並べられています。いただく順序は普通好きな料理から自由に頂いてよいのですが、やはりここでは無苦しくない箸使いをする事が作法の一つではないでしょうか。ここで嫌い箸のいくつかを挙げてみましょう。

刺し箸
料理に箸を突き刺して食べる。
涙箸
箸の先から汁をポタポタ落とす。
ねぶり箸
箸を付いたものを、口でなめて取る。
寄せ箸
食器を箸で手前に引き寄せる。
膳越し
膳の向こうにある料理を手で取り上げないで箸で取る。

ナイフ・フォーク・スプーンが当たり前のようになった今の時代、握るだけのそれらはいとも簡単に使いこなす事ができます。しかし、箸においては私たちが普段見過ごしている無作法な行為があるのではないでしょうか。幼少の頃、箸使いで親から叱りを受けた経験は誰しもが持っているものと思われます。箸食以外の食法が当たり前のようになった今だからこそ、もう一度「箸使いのマナー」を考えてみるべきではないでしょうか。